こんにちは、通グッズ編集部です!
海洋プラスチックごみのアップサイクルブランドとしてグッズで大人気の【buoy(ブイ)】。
技術力のあるプラスチックメーカーとして医療機器などを少量開発してきた企業が、海洋プラスチックごみ問題に対して何かできることはないかと社内研究チームを立ち上げたところからスタートしたブランドです。
社員にとって、プラスチック素材は日頃扱っている我が子のようなもの。
「プラスチックが大好きだからこそ何とかしたい」
そして、大量生産品ではなく工芸品を目指すというbuoyが誕生しました。
「日本各地からどうやって海ごみを集めているんだろう」
「どんな風に、どんな想いで商品を作っているんだろう」
そんな編集部の”キニナル”から生まれた今回の企画は、大人の社会科見学です。
場所は神奈川県横浜市。ワークショップなども行われる直営ショップと、職人さんが作業をされる工房にうかがい、入社3年目の小林輝星(きらり)さんにお話を聞いてきました。
展示会で一目惚れ。その場で入社を決めたbuoyの魅力
ーーランプシェードがお気に入りで、「家の中はbuoyで溢れています」と、話す小林さん。環境問題に関心が高かった学生時代、空き時間に偶然立ち寄った展示会でbuoyを見つけたのが、最初の出会いだそうです。
当時は大学生で、就活中でした。自分が何をしたいのか、どこで働こうというのがあまり見えていなかった時期で、友人との待ち合わせまで時間があって、近くでちょうどサステナブルエキスポをやっていたので入ってみたんです。
それで、buoyのブースを見つけて手に取ったときに「は!これだ!」ってなって。直感的に『ここで働きたい』と感じて、その場で担当者の方に声をかけてしまいました(笑)
それ以前は、”プラスチックは悪者”という固定概念に縛られていて、コンビニに入るのも嫌だし、プラスチックで溢れている世の中がすごく嫌で。個包装されているものは買わず、野菜も八百屋さんでカゴに入っているものを買ったり、お肉もシリコンバッグを持って行って量り売りで買うぐらい、徹底的にプラスチックを避ける生活をしていたんです。
でも、buoyの製品を見た瞬間に、「プラスチックがこんなに人の心を動かすことってあるんだ」と。自分がこれまで悪いものと決めつけていたものが、人を喜ばせて、心をときめかせて明るくさせる、そんなすごい力を持っているのがプラスチックなんだという風に変わりました。
インテリアに馴染む、美しく唯一無二のプラスチック製品
ーー直営ショップには、buoyの全商品が並んでいます。カラフルなキーホルダーやコースターなど、これまで見かけたことがあるものもありますが、時計やランプカバーなど、初めて実物を見るものもあります。素材は海洋プラスチックごみ100%です。
海洋プラスチックごみを20%や30%混ぜていますというものはけっこうあると思いますが、海洋ごみ100%で製品を成型しているところはほとんどないと思います。
手間も時間もかかるので、プラスチックへの想いがないと続けられないことですね。
プラスチックは軽くて丈夫、水にも強く腐らないために、一度海に流れ出すと長く自然に残り続け海洋ごみとなってしまいます。buoyは、そういったプラスチックの特徴を活かして、水回りで使ってもらえるものや、インテリアとして長く使ってもらえる実用性のあるアイテムを作っています。
コラボ製品の石けんケース/mu(ムー)
ーー九州産業大学、シャボン玉石けん、おぢかアイランドツーリズムとのコラボで作った「石けんケース/mu(ムー)」は、2023年グッドデザイン賞、九州ADCアワード2023にてソーシャルデザイン部門大賞を受賞しています。
五島列島の小値賀(おぢか)島に漂着したプラスチックごみを使い、小値賀の海岸の石の形をモチーフにしています。均等じゃないかんじも、丸みも石そのままで可愛いんです。
蓋があるので石けんに水がかかるのを防ぎ、持ち運ぶこともできます。
通常のプラスチックだと無機質な雰囲気になりがちですが、色んな海で拾われた色が混ざっているのでインテリアに馴染みやすいと思います。
家の空間や机の上にbuoyがあると明るくなるし、会話のきっかけにもなりますね。
すべての製品、一つひとつに違った表情があるので、お店に来られる方も手に取って、迷って購入されます。このあたりが、私たちがbuoyを工芸品と呼んでいる理由のひとつです。
ブイは、ただ模様が綺麗だからと手に取る方も多くて、そういう人が海ごみに関心を持ってくれたら嬉しいです。
知っている海を見つけた嬉しさと後にくる複雑な気持ち
製品の帯や裏側に採取地が示されたコースター。現在はQRコードも記載されている
ーーもう一つ、buoyの製品の大きな特徴のひとつに、アイテム一つひとつに「材料に使われたプラスチックごみが、どこの海で回収されたのかが分かる」採取地の記載があります。若狭、糸島、逗子、伊豆下田など、詳細をQRコードで見ることもできます。
プラスチックって生産者の顔、背景が見えないことも簡単に捨ててしまえる原因だと思うんです。だから、背景や、その地域の魅力を一緒に知ってもらったり、SNSで繋がったりすることで、エモーショナルな商品、より深く愛着が持てる商品になることを目指しています。
ただのプラスチック製品じゃなくて、ただの海ごみじゃなくて、その背景や回収のストーリーも含めて価値として届けるのがbuoyのいいところだと思っています。
採取地があることで、お土産やふるさと納税でも扱っていただきやすいですね。
直営ショップに来るお客様の中には、マリンスポーツやダイビングが好きな方も多いので、「ここに潜りに行ったことがある」という理由で選ばれる方もいます。
他にも、今住んでいる地域だったり、身近な人の出身地だったり、何かしらゆかりのあるものを選んでいただくことが多いですね。
buoyに入って、学生時代の私のように「何かしたいけれど何をしたらいいか」とモヤモヤを抱えている人が意外と多いことに気付きました。buoyを買うことで、そういうモヤモヤを晴らせることもあるんだなと、改めて感じています。
気が遠くなる作業で集められた想いをカタチにする
ーーbuoyさんは、全国各地のビーチクリーン団体と提携し、海岸で回収したプラスチックごみを「ヴィンテージ材料」として買い取っています。ごみを集めて、それを製品に生まれ変わらせる。ひと言でいうと簡単なその工程には、様々な人の想いが連なっています。
まず大変なのはごみを回収することで、ボランティア団体さんが一番頑張ってくれていると思います。
最初の頃は自社で拾いに行っていたんですけど、その内に「うちのごみ使ってください」って各地の団体から声がかかるようになりました。
現在35団体からごみを買い取っていますが、ごみを拾ってもらうだけでなく、それぞれ色分けして、高圧洗浄機で表面の汚れを落としてもらいます。
色は、赤、青、黄色、白、緑、黒に分けてもらっていて、例外でオレンジ、紫などもあります。
地域によって、ハングルが書かれている青いポリタンクが多いところもあれば、アナゴ漁に使われる黒い仕掛けが多かったり、色の分け方にもボランティア団体さんの特徴があります。
ーー海流の影響で、九州西側、日本海側に多くたどり着くプラスチックごみ。「初めて見たときは衝撃でした」と、小林さんは話します。
ごみの量が圧倒的に多いのが九州西側や日本海側です。あるボランティア団体さんに会いに行き、一緒にごみを拾わせてもらいましたが、海岸の、足の踏むところすべてにごみがありました。
ボランティアって善意だけでやるには限界があって、ごみを処理するにもお金がかかるし、拾っても拾っても流れてきて終わりが見えないことに、むなしいという気持ちを抱いてしまう方も少なからずいます。
だから、そういった方達のモチベーションや希望になれればと思いますし、簡単に捨てられない、使い捨てじゃないものを作っていきたいです。
溶かして固める。プラスチック企業としての腕の見せどころ
福祉作業所で粉砕機にかけられ工房に集まってきた全国のプラスチックごみ
ーー回収され、色分けされたプラスチックごみは、次に福祉作業所へ送られ、粉砕機にかけられます。粒の大きさを揃えるためにふるいにかけて、ふるいからおちた細かい粒子もまた使用します。商品ごとに使用する量が決まっているので、重さを量り一つひとつパッキング。その後、工房に届けられて成型作業に入ります。
長年のプラスチック製造のノウハウを使い、熱と圧力を掛けながら一定の条件でプレスすることで、プラスチック素材は混じりあいつつ完全には混ざらない、モザイクのような美しい成形板を作ることができます。
同じプラスチックでも素材によって溶ける温度や特徴が全然違うので、熱をかける温度だったり、時間の長さを、その時々で目で判断しながらやっています。手に取った時に、「この素材固そうだな」と分かるものもあれば、作業中に「これはなかなか溶けづらいな」というものもあるので、職人さんが一つひとつ試行錯誤しながらやっています。
食品に関わるアイテムは作っていませんが、中のごみが露出しないようにフィルムをかけてコーティングしています。
アルミの金型、コーティングフィルム、その上に粉砕されたプラスチックを乗せてプレス機にかける
プレスしたあとは、型から外して”バリ取り”という、はみ出した余計な部分をカットする作業を行います。細かくて、素材によっては力も必要です。
職人さんはすごく簡単そうにやっていますが、なかなかこんな風にきれいには切れないですよ。
バリ取りで出た端材はごみにせず、また集めて製品づくりに使っています。
語らずに存在感を増し、広がるbuoyの製品
ーー現在開催されている大阪・関西万博の会場にも、buoyの製品が使われています。
物販棟に使用されている外装材にbuoyが採用されました。中にワイヤーを通して一枚一枚取り付けることで、風を受けてクルクルと回るカーテンのようなものが出来上がっています。
使用したのは対馬のプラスチックごみ約750kgです。5000枚以上作る必要があり、忙しくて大変でしたが多くの人にbuoyを見てもらえるのは嬉しいですね。
「うみクル」と名付けられた万博外装用のbuoy製品
ーーこの他にも、アーティストとのコラボアイテムや、浅草の刃物店のオリジナル商品など、buoyで製品される商品は多岐に渡ります。
この夏は、クジラをモチーフに様々なデザインを手掛けるあらたひとむさん、水棲生物画家繁田穂波さんら、海洋生物を愛するアーティスト方々とのコラボグッズを多数販売しています。一部はすぐに完売して、現在再生産中です。
アオウミガメをモチーフにデザインされた繁田穂波さんとのコラボ商品「Cross the Ocean」
刃物の柄にbuoyが使われた包丁はOMOTENASHI Selection 2024 金賞受賞
ーー今年は、カナダやアメリカ、台湾への進出が決まっているそうです。
残念ながら、まだまだ私たちが買い取る量よりも、流れ着く海ごみのほうが圧倒的に多いんです。今は、買取を希望してくれているすべてのボランティア団体さんに応えることができていない状況で、新規の団体さんとの取引はストップしています。
現在は小物の製造が中心ですが、取引先を増やして、例えばテーブルなど、より大きなものづくりにシフトすることで、海ごみの回収が促進されるような製品を作っていけたらなと思っています。
ブランドはまだ海にごみがあるという指標。buoyがなくなる時がゴール
ーー直営ショップでは定期的にワークショップを開催。全国各地から参加される方がいるそうです。また、今年から小学校での講座も始め、子どもたちと一緒にビーチクリーンを行っています。
最近は、学校でSDGsを学ぶことが増えてワークショップにも親子で参加される方が増えましたね。
小学校での講座は逗子で行いました。海に近いところなので子どもたちの関心も高くて、一緒に拾ったごみをフォトフレームにしてプレゼントしました。
逗子の小学生と行ったビーチクリーンの様子
ーーbuoyの製品をどんなところで取り扱ってほしいかという問いには、「どこでも。海ごみに興味がなくても気軽に扱ってほしい」と、小林さんは答えてくれました。
気軽に手に取って、少しでもいいなと思った方には触れてもらいたいという想いがあります。
「海ごみの問題」って聞くと、社会問題、プラスチック問題というように私たちには大きすぎて、どうにもならない問題のように感じてしまう。
でも、「こういう小さなところから自分にできることがあるよ」というのを、色んな人に知っていただきたい。それを広める手段としてグッズを使わせてもらっています。
プラスチックは問題視されていながらも、製造量は増え続けているといわれています。
アジア地域から流出する量が特に多いですが、海洋プラスチックごみにはリサイクルの名目で先進国から輸出されたごみもあります。
最終的にはbuoyがなくなるところを目指していますが、まだその未来は少し遠いですね。
それまでは、意地でもこの事業を継続させたいなと思っています。
ブランド情報
buoy横浜工房併設店〈buoy直営店舗〉
〒221-0057 神奈川県横浜市神奈川区青木町6-24
(横浜駅きた東口より徒歩10分)
営業時間:9:30-17:00 ※事前予約が必要です。