1990年。第22次ニシナリ暴動で出会い、麦酒を醸し続けた3人。
天真爛漫なエミリーに、シムコ、シトラの双方が恋に落ちた。
エミリーが思いを寄せていたのは兄シムコであったが、弟シトラの策略により、その恋は成就しなかった。
更にシトラはエミリーを陵辱し、たった一度の過ちにより、エミリーはシトラとの子を、宿してしまう。
誰にも言わず、一人で育てよう。決意したエミリーは、事実を伏せ、母国、アメリカ・ポートランドに単独で帰米した。
愛するエミリー、そして我が子を失い、たった一人の肉親である兄との関係をも自ら折ったシトラ・ホフピンスキ。
屈折した愛情は、3人の拠であった麦酒醸造の象徴、上面発酵と天然忽布への過剰ともいえる憎悪へと変わっていった。
一方、愛するエミリーと、弟との思い出である、上面発酵と天然忽布への憧憬を捨てきれないシムコ。
違法醸造を続け、庶民に振る舞い続けた。彼もまた、幸せだった3人での醸造、その思い出の呪縛に因われていた。
30余年の月日がながれ、AREA2470は、シトラ率いるホフピンスキ党に統治される。
街には粗悪な、人造忽布と下面発酵酒が溢れていた。エミリーの数十年ぶりの来西。
彼女は直ちに、反政府抵抗組織”Nishinari Hop Headz”を率い、粗悪な人造忽布と下面発酵酒の根絶と、
天然忽布と上面発酵文化の復権のために抵抗運動を続けていた。
私を愛した男。ホフピンスキの暴走を止めるのは、私しかいない。
あれから、30年。翻弄された時間に、いま、終止符が打たれる。