“タドれるカシミヤ”の背景
カシミヤはモンゴルの基幹産業のひとつですが、おもに原材料として中国に輸出されています。ここ数年で25%の物価高というモンゴルにあって、原毛の販売だけではカシミヤ山羊の数を増やさない限り生産者の収入向上にはつながりません。カシミヤ山羊は根こそぎ草を食べてしまうので、数の増加はそのまま環境破壊(砂漠化)につながりかねない…。そんな現状を打破して、適切な購入価格で原毛を仕入れ、モンゴル国内の製毛工場と紡績工場を経て、デザインから製品生産まで「(モンゴル)国産」にこだわることでモンゴルのカシミヤ産業を活性化しようと、マーケットを日本におき、日本法人を立ち上げたニットメーカー「サステナブル モンゴル」のトゥブシンさん。
TADORiオリジナルのカシミヤ製品はこの志に賛同して生産したものです。
“タドれるカシミヤ”ができるまで
おもな原毛生産者はウランバートルから東に100キロほどの中央県エルデネ地区の遊牧民チャトゥラさん。山羊や羊、ヤク、牛など1000頭ほど放牧しています。そのうちカシミヤ山羊は限界値とされる40%ほど。山羊たちは厳しい冬を乗り切るために外側の剛毛の内側に産毛のような柔毛を生やします。その柔毛は春になると自然に抜け落ちる冬毛で、暖かくふんわりとしなやかで保温性保湿性に優れています。これを専用のクシで一頭ずつ丁寧にすいたものがカシミヤの原毛です。トゥブシンさんはこの原毛の製毛を「Uguuj shim」というモンゴル政府公認の製毛工場に依頼しています。最初に手作業で原毛をより分け、ゴミや汚れを取り除き、毛の色別に分けます。それを製毛機に3回かけることで質を均一化していきますが、この時点で最初の量の40%に減ります。1頭からとれる柔毛は300~500gほど。1枚のセーターには3頭分のカシミヤが必要と言われています。 工場内には検査室もあり、毛の長さや細さ、丈夫さ、固さ、油分など、モンゴル政府が設定したさまざまな基準をクリアしているか厳密に検査しています。原材料として輸出されているカシミヤはこの状態のもの。ちなみにより分けられた60%の毛はフェルトなどに利用されます。トゥブシンさんはこの原料を信頼する紡績工場に持ち込み、カシミヤのニット糸にします。
カシミヤニット糸から製品に仕上げるのはトゥブシンさんのモンゴルの会社「サステナモンゴル」。
日本の大手ニットマシンのSHIMA SEIKIに技術者を派遣して研修を重ね、日本市場を見据えて研鑽を積み、OEMメーカーとして有名ブランドとも取引しています。まずデザイン画を元にパーツごとにデータ化、それぞれのデザインごとに編み機を変えて編まれたパーツは、加工室で編み合わされて形が完成。専用の洗剤で洗い、特殊な乾燥機にかけてアイロンでプレスし、糸のしまつ、タグづけ、検品と、すべての仕上げ作業を行います。さまざまなブランドからのオーダーをクリアする中で技術力もデザイン性も向上しているメーカーです。モンゴル製のカシミヤ商品の質のよさを日本のマーケットに広めることは、モンゴルの遊牧民文化への貢献と自然環境の保護に繋がると考えるトゥブシンさん。 TADORiオリジナルカシミヤ製品にはそんな気持ちが込められています。