そもそも糀とは、どのようにしてつくられているのでしょうか。
ざっくりとした一連の流れは次のとおり。
1. 前日に米を水に浸けておき、水分を吸収させる。
2. 浸漬させた米を蒸し釜で蒸す。
3. 蒸した米を適温になるまで冷ます。
4. 米を室(むろ)に運び、糀菌を浸ける。
5. 数時間おきに、酸素を送り込むために素手で混ぜる「手入れ」を行い、温度管理をしながら寝かせる。
これらの工程は、約3日間半かけて行われます。糀づくりの生命線ともいわれる「室(むろ)」には、何百年も前から土壌菌が棲みついていて、それらの菌と職人の手の常在菌と糀菌とが混ざり合って、いい糀がつくられているのです。「糀」という漢字の成り立ちは、米のまわりを覆う菌糸がまるで花が咲いたように見えることから。糀屋がつくる米糀は、昔ながらの製法にこだわり、なるべく機械化せずに手作業で行うようにしています。
「米を傷つけてしまうと、そこから乾燥してしまって菌糸が伸びていかないので、絶妙な力加減が肝になります。糀は生き物。発酵というものは効率よくコントロールするというよりも、つくる人が糀に合わせなければいけません。室の温度は、夏でも冬でも35〜40℃。なかなか過酷な作業ですが、糀がうまくできないと次につくる加工品もおいしくならないので、ここでの作業はとても重要なんです」