『地域猫 「ぶい」 のひとりごと』
執筆:栗山 圭介
ボクは地域猫。キジトラのオス。
名前はないけど街の⼈からいろんな名前で呼ばれている。
ミー、チー、トラ、シマちゃん、……どれもしっくりこないが、
呼ばれれば誰にでもシッポであいさつする。
少し前、保護猫活動家の⼈に動物病院へ連れられて、
去勢⼿術をして⽿カットしてからは、「ぶい」と呼ばれることが多くなった。
⽿が「V」字にカットされているから「ぶい」、結構気に⼊っている。
「ピース」と呼ぶ⼈もいるけど、それも嫌いじゃない。
この街にはボク以外にも「ぶい」がたくさんいる。
みんな病院で⽿カットした地域猫。
「ぶい」と呼ばれると、みんなで返事をしてしまうことがある。
ボクたちのように街で暮らす猫は、人にとっては迷惑らしい。
耳カットしていない描たちを放置しておくと、どんどん仔猫が生まれて、
その仔猫がやがてまた仔猫を産んで、街中に猫が溢れてしまうから。
もともとカラダが弱かったり病気になりやすい猫もいて、
そういう猫は感染症にかかりやすく、病気にかかると、
誰かにうつしてしまうことが多いから、保健所に連れていかれることがある。
耳カットしているからといって、誰からもやさしくされるわけではないんだ。
里親探しの会に連れて行ってもらえるのは、
ほとんど がべットショップで売れ残った仔猫で、
それでも里親が見つからずに、此処に帰つてくることが多いと聞いた。
ボクらのような地域猫が里親探しの会に連れて行かれたことは、
ほとんどなく、誰もがずっと此処で暮らすことになる。
猫好きな人たちは、いたるところにエサを用意してくれる。
うれしいけど、それが人にとっては大迷惑らしい。
そのままにしておくとバイ菌が発生したり、
腐ったり、カラスやハエがつっついて、
寄生虫や感染症を発生させ ることがあるんだって。