微生物の土づくり
土が作物を育む力のことを「地力」と言うのですが、今から10年ほど前に、土や地力に関する文献を読み漁ってみても、学術的にまだわからないことの方が多く、まさに『ブラックボックス』状態でした。ただ、微生物が地力に関係しているだろうことは直感で理解していて、その仮説のもと、最初は個別の微生物の純粋培養からスタートして、徐々に「常温・無殺菌」の環境下で、複数の微生物の培養をコントロールする研究へとシフトして行きました。
「人が野菜を育てる」という発想から、「野菜が勝手に育つ土を人が育てる」発想へのシフトが、持続可能な農業のカギを握っているように思います。
3年後のカラダをデザインする
このように、微生物の土づくりからこだわって農業を始めたきっかけは「持続可能な地球保全」のためでしたが、実はもう一つ目的がありました。
それは、「人が食べもので健康になること」です。
至極当たり前のことと思われるかもしれませんが、生活習慣の乱れや日々のストレスから、私たちは意外と簡単に体調を崩してしまいます。病名がわからないけれど、「なんとなく体調が優れない」という症状も、病気になる一歩手前の状態といえます。
東洋医学の考えでは、このような状態を「未病」とよび、未病のうちから体を整えることが基本指針となっています。
病気になってしまったら鍼灸や漢方薬(生薬のミックス)によって治療する必要がありますが、未病のうちは食材(野菜やくだもの)を使ってカラダを整えられないだろうか、と考えました。
食材は生薬ほどの作用はないものの、穏やかな作用を示すものがほとんどなので、野菜の調合次第では、食べものでありながら、漢方薬よりも軽めのお薬としてもふるまいます。これは、まさしく「医食同源」という言葉の実践につながっていくものです。